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マンション管理組合の活動に無関心な人たち

あなたの資産が蝕まれる――理事任せ、管理会社への丸投げ、総会委任状の問題点

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写真はイメージ。本文とは関係ありません/©︎paylessimages・123RF

496戸の分譲マンション、組合総会の出席者は25人だけ

分譲マンションの管理は、煩雑で、プロのノウハウも必要であり、ほとんどのマンションでは、共用部分の管理について、専門の管理会社に業務をほぼ全面的に委託している。

たとえば、会計、出納など管理事務、清掃、設備点検、修繕計画作成、その他諸々の作業の手配などだ。それは外部業者の契約などの見直しから、老朽化した設備の修繕までに及ぶ。予算と決算などについても決める重要な集まりが、年に1回の管理組合の総会となる。

しかし、こうした管理組合の活動に無関心な人は多い。

実際、2020年秋、千葉の湾岸エリアのマンションの管理組合通常総会が開催された際、総戸数496戸に対して出席者数はたったの25人だったという。

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コロナ禍で集会への参加を控えているとはいえ、あまりにも寂しい数だ。このマンションでは新旧11人ずつの理事・監事だけでも計22人いるはずなのだが、残念なことに役員ですらかなりの人が欠席している。

その結果、委任状185通、議決権行使書154通を加えても議決権総数の73%しか集まっていない。もしこの総会で特別決議(4分の3以上の賛成が必要)を要する議案があった場合には決議できないことになる。

しかも、27%もの管理組合員(区分所有者)が年に1回の大事な総会への「欠席届」、つまり委任状または議決権行使書を出すという、基本的な意思表示すらできないというあきれた状況なのである。

委任状だけでスルー、その理由は?

総会の出席率や、管理組合への関心を高めるための改善は難しい。こうした問題はどこの分譲マンションでも抱えており、都市圏で増え続けるマンションの大きな課題だ。

とはいえ、区分所有者がそもそも無関心なのだから、そうした思いさえも及ばない。現役世代は「忙しくて……」と言い訳する一方、子育てを終えた世代が増え続ける高齢住民もペットの世話など自分周りの雑事に追われがち。また、高齢を理由に健康に不安があってと積極的にかかわりたがらない。

そこで多くの分譲マンションの区分所有者は、「理事会が示す議案の一括承認を目的にした委任状を出せばそれで済む」と思っている。

しかし、区分所有者による管理やマンション自治の基本に立ち返ると、白紙で委任状を出すことには注意が必要で、少なくとも議案をしっかりチェックしたうえで、議決権行使書により個別議案ごとに賛成・反対の意思表示をするべきだ。

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最近では大規模修繕の予算について、メディアなどでしばしば取り上げられるから、気にする人も増えている。しかし、全戸に配布される総会資料、さらには管理会社から配布される重要事項に関する説明会とその資料といったものは、区分所有者にスルーされてしまいがちだ。

もちろん、その気持ちが分からないでもない。

区分所有者が必読の総会資料とはいえ、その多くは決算報告の数字が並んでいるページがほとんど。詳しく説明されていないことも多く、日頃、決算資料を目にしている人でもない限り分かりにくい。

しかも、仕事であれば別だが、それを見ていなくても誰に文句を言われるわけではないので、問題意識をもってじっくり見る人は多くはないだろう。

また、総会資料の項目ひとつをとっても、表記がおおざっぱ過ぎる「どんぶり勘定」のようなマンションの決算もある。理事はもとより理事長も業務を「管理会社任せ」にしていることも意外と多い。その場合、総会において正当な反対意見を述べる人がいたとしても、理事長がその意見を理解できないことも多々ある。

そのうえ、無関心な区分所有者は「理事に任せておけば大丈夫」「管理会社がやっているから」と信じて疑わない。こうした経緯からたとえ問題がある議案でも、委任状によって承認されてしまう。

これを防ぐには財務面に限らず、十分に区分所有者に管理組合の数字や状況を分かりやすく開示することが必要だ。可能なら企業の決算報告のようなサマリーが付けられればいいのかもしれない。

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管理会社に丸投げの落とし穴

次にマンションの今後の価値をゆだねることにもつながる管理会社の業務や、担当者の問題点を考えてみよう。

ある大手の管理会社は、全てのマンションを標準的に扱いたいためか、なんでも管理規約に盛り込もうと総会議案のなかに、そうした条項の改正、追加を入れたがる傾向がある。このような細かい条項変更は管理会社主導の理事会はもとより、そうでない理事会でもそこに気が付くことは難しい。

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マンション管理規約は、マンション管理の憲法のようなもので、共用部分の範囲やその使用法、区分所有者の責務、理事会の権限、総会、会計など管理組合運営上の大原則が定めているものだ。

だから、細かいルールなどは細則にしたり、総会や理事会で承認したりする、管理会社のサービス内容については管理委託契約などに含めればよい。それをマンション管理規約に盛り込む必要はないのだ。

都内のある区で大手企業が社宅として一部(数十戸)を保有するマンションでは、総会前になると、財閥系のマンション管理会社の担当者が「総会では何もおっしゃらないで下さい」と(その企業の総務担当者や居住している社員らに)くぎを刺すそうだ。過去1年の決算と次年度の予算を審議する唯一の総会で質問されては困ることがあるのではないかと疑いたくなる話だ。

管理会社から派遣される担当社員のなかには、明らかに管理会社本社で作成したものをコピペしただけの資料を出してきて、個別マンションの事情を考慮していないという資料を出してくる社員もいるという。

一見してお粗末な議案であっても管理会社に「丸投げ」の管理組合の理事会では、判断ができず、問題のある議案でも大多数の“白紙委任状”によって承認してしまうこともしばしばあるというのだ。

総会資料――ここだけはチェックしておく!

そもそも管理会社の担当者のなかには、何年もそのマンションを担当しているのに、そのマンションの管理規約すら読んでいない者もいる。つまり、大企業系列とはいえ、管理会社を信頼し過ぎてはいけない。

その担当者が会社(の上司)に向いているのか、担当するマンションのほうを向いているのかを見極め、理事会の意向が反映されているのか、一般住民の目線も大事にしているか、総会を通じてチェックしておくことが大切だ。

具体的には、次の点を注意したい。

1)総会資料に出されている問題点がいつまでも残されていて解決されていない
2)決算報告書のなかに具体的な内容の把握できない支出がないか
3)決算報告の支出が、管理費から出すべきものか、修繕費から出すべきものかが不明確
4)管理委託契約や管理規約の変更を毎年行う、あるいは行おうと提案する
5)新規の支出をともなう提案を理事会の承認だけで進めようとする
6)区分所有者の意見などが出ていても、採決を急ごうとする
7)重要議案を説明不足にして、区分所有者の誤解を誘発するような表現はないか

問題は管理会社だけでなく、区分所有者にもあり

一方、問題は管理会社だけではない。区分所有者や代表となる理事会にも問題はある。

それはなんでもかんでも管理会社に任せにする姿勢と無関心だ。

たとえば、管理報告書や区分所有者に配布する文書などは、事前に管理会社から理事長や理事に内容確認を求められる。しかし、何も言わずそのままスルーしてしまう姿勢で、管理会社からすれば細かく見ているのか、見ていないか分かりかねる理事会であれば、好き放題にされるのは当然だ。

そもそも分譲マンションは、購入した時点で区分所有者は自動的に管理組合員となるのだが、そうした原則にも関心がなく、理事になってはじめて「管理会社」と「管理組合」の違いを知ることとなるものも少なくない。なかには知識不足から、「自分は管理組合に加入した覚えはない」などと言い出す人もいる。

区分所有法は、はっきりと「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体(管理組合)を構成し」と規定されている。つまり、全ての区分所有者がその意思に関わらず管理組合員で、区分所有者全員が協力して共有資産の維持管理を行う義務を負っている。

しかし、誰かがやってくれるだろうと無関心な区分所有者が多すぎるのが実態だ。マンションは区分所有者共有の資産で、それを守るには誰もがその義務を負うのだ。

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区分所有者に当事者意識を持たせる方法

区分所有者の意識を高める、理事会の主体性を持たせる方法の1つが、共用施設の見学会の開催がある。

駐車場、駐輪場、ゴミ置き場、ゲストルーム、会議室などの普段から見える共用部分はもちろん、倉庫や電気・機械設備関連など普段は見えないところを区分所有者に見せておくことで災害対策にもつながる。

また、近所のマンションの管理組合や管理会社の動向をチェックし、情報交換することも役立つ。こうすることで自分のマンションの管理の質、管理費が適正かということも分かるようになる。

実際、こうしたリサーチを行うことで、これまで漫然と支払っていた管理会社に支払いが、周囲のマンションに比べて高いことに気付くということもある。ほかのマンションの事例を知れば、初めて相対的な管理会社の評価や管理水準の評価ができるようになる。

分譲マンションの多い地域では、管理組合同士で定期的な意見交換の場が定例化されている地域もある。また、全国には管理組合の連合会や協議会もある。

【参考】〈管理組合団体〉特定非営利活動法人全国マンション管理組合連合会

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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